ナイン・ストーリーズ
大パチを扱きまくるとんでもない高田純次
新潮文庫の特別カバーを買ったので表紙が黄色くてかわいい。縁起良さそうですね。
バナナがどっさり入っているバナナ穴に行儀よく泳いでいき、中に入ると豚みたいにバナナを食べ散らかすバナナフィッシュ。あんまりバナナを食べ過ぎて、バナナ穴から出られなくなりバナナ熱にかかって死んでしまうバナナフィッシュ……グラース家の長兄、シーモアの謎の自殺を描く「バナナフィッシュにうってつけの日」ほか、九つのケッ作からなる自選短篇集。
👆あんまり縁起が良くなさそうやな……。
読んだきっかけ
書いた通り黄色い表紙がかわいく、限定表紙大好き太郎だからです。「新潮文庫の100冊」に選ばれているためプレミアムカバー仕様になっているそうです。今年のラインナップで言うと『雪国』『こころ』『銀河鉄道の夜』『人間失格』は角川のかわいいカバーで持っているので、消去法的にこれになりました。
以前『そして誰もいなくなった』の感想記事で書いたように、海外小説を読むのが苦手です……。とはいえコイツは短編集。サラッと読めるやろ〜
👉ナメてかかっておりました。
全体の感想
9本のうち4本目まで読んで「ロクな終わり方をする話がないな……」となり、読むのをやめちゃおうかなと思っていました。
5作目の「小舟のほとりで」は自分の感覚としては爽快感があるというか、わざわざ人を露悪的に書いておらず個人の持つ優しさに目を向けている感じがしてもう少し読む気になりました。
そこまで読んだらあとはもう何とかなるので(?)読了できました。が、日本語で書いてあるのに意味がまるでわからない部分が点在していて……。
短編集ではありつつも連作的な面が大きいです。あまりのめり込めなかった点含め、以前夫に勧められて見た『パルプ・フィクション』を思い出しました。
後ろに訳者の後書きがついておりサリンジャーの性質について多少書かれているのですが、それを読んでも(そして作品を読んでも)多分このおじさんとは仲良くなれないだろうなという気持ちになります。
作品ごとの感想
特に書きたいものだけピックアップしています。 あまり良い感想を書いていないものがあります。
コネティカットのひょこひょこおじさん
女性主人公は9作中本作と「小舟のほとりで」だけで、後者が親子を主眼としているのに対して、本作は(子供もメインで出てきますが)女友達との会話が主体になっています。
有り体に言えば、空想癖のある娘やええかっこしいで趣味の合わない夫、そしてそれらから構成された家庭に嫌気がさしており、死んでしまった元彼に思いを馳せつつ、女友達に愚痴って泣きつく話です。
まず、エロイーズが元彼・ウォルトを引きずっているのは元彼のことが好き過ぎて……とか彼が特別で……とかではないなぁと思いました。
ただ「選ばなかった方」の選択肢が素晴らしいように見えているだけです。
根拠として、エロイーズは職業婦人である友人・メアリーに対して女は自立した職を失うべきではない、と己を反面教師にするように言っています。結婚して家庭に入ったことを後悔しているんですね。
その状態で過去の男を見返しても目が曇っていること請け合いです。喧嘩別れではなく死別なのでなおさら美化されていることでしょう。
私は完全上書き保存型女のためシクシク泣き散らかしているエロイーズにイライラし、娘のラモーナの妄言にイライラし、キレっぱなしです。 短気だ……(自覚あり)。
ド・ドーミエ=スミスの青の時代
終わり方が怖い話が多い本冊のなかで、終わり方は怖くないのに終わり方以外の全部が怖いのが「ド・ドーミエ=スミスの青の時代」です。 途中までホラー小説を名乗れます。
自分語りなんですが、私は大学生の時男子大学生のことがメチャクチャ苦手でした。根拠のない自信があるように勝手に感じていたためです。
で、勝手にどころでなく確実に、根拠のない自信に溢れ散らかしているのが、ド・ドーミエ=スミスなる偽名を用いて年齢を10歳も偽り、女生徒にハタ迷惑な手紙を送る主人公青年(19)です。
しかもコイツがありもしない大パチを扱きまくるとんでもない高田純次で、読者から見るといつ破滅するのかとハラハラしっぱなしです。パチにパチを重ねまくり緊張が高まっていく展開に対して、締め方は線香花火的というか、ふっと急に大人の階段が見えるようになり終わります。
その終わり方が妙にリアルでもあり、確かに「他人にも自我がある……‼️」ということに遅れて気づいた人ってこんな感じだよなと実体験もベースに一定の共感をしました(?)
テディ
あまりに他の収録作と毛色が違うので「??」となったのですが、本冊冒頭に書かれている禅問答の回答がこの作品らしいです。えーっっ。
なんかいろんな思想が悪魔合体してませんか?
ざっくりいえばテディというガキンチョが非常にスピリチュアルな説教をかましてくるのがこの作品です。
説教臭い短編というと、以前宮沢賢治「ひかりの素足」を読んだ時ド直球の説教(※原義のほう)で驚いたのですが、なぜこういうタイプは子供を使うのでしょうか。しかも「テディ」はガキが出てくるというだけでなく、後ろに作者の顔がくっきり浮かんでまっせと言いたくなるほど、テディが謎思想を垂れ流しにしているのです。
私はとある病気で病院にかかり、勝手に精神の問題ということにされて瞑想をやれと言われた時から、瞑想とかそれに類するものが大嫌いになったのでアレルギーが出てしまいました。多分、テディが子供ではなく、サリンジャーと同じPTSDに苦しむ元兵士であったならこんなに嫌いにはならなかったと思います(自分は子供だったことはあるが兵士だったことはないため)。
実質ツイート
- 文庫本しか並んでない本棚ってブックオフみたいで戦闘力弱そうなんだけど(炎上)、現実問題通勤時間に本を読んでることが多いから文庫本ばかり消化されていっちゃう
- 上記に関連して、電車で本を読んでいるとたまにジロッジロ覗いてくる人がいる
- それは別に良くて今回みたいにオサレに海外文学なんて読んでる時なら「フフーン😽」だけど、もし私が『超エロゲー ハードコア』とか読んでてページ上部にそのタイトルが踊ってたらどういう反応するんでしょうね



